春の兆

岩下 啓亮
Feb 9, 2021

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もう何度めか、夢の中にきみが現れた。

夢の中のきみはわがままではなやかだ。

でも人懐っこさを装うところは一緒だ。

どの道わたしはきみに翻弄されている。

気がつけばいつのまにか花が咲いている。

梅をかわきりに、さまざまな色の花が。

周囲を見渡す余裕さえなくなっていた。

心も体もがちがちに凍らせていたから。

“模範的な正解が正しいとは限らない。”

“両親が立派すぎると子は窮屈になる。”

きみに伝えたい言葉を幾つか噛みしめて、

愚鈍なわたしは仏頂面で無関心を装う。

三十前のわたしなら煩悶していただろう。

還暦前のわたしだから自制していられる。

それでも狼狽える、春の兆のまぶしさに。

親切や思いやりを、好意だと錯覚して。

鰯 (Sardine) 2021/02/10

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岩下 啓亮
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Written by 岩下 啓亮

鰯です。熊本在住。イワシ(Sardine)とお呼びください。Mediumを日本語と英語の練習帖として活用しようと思う。Medium以外では、こちらを回遊しています。Twitter → @iwashi_dokuhaku はてなブログ『鰯の独白』→ kp4323w3255b5t267.hatenablog.com

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