形見分け
休日だので私は、先月なくなった同級生リュウジの遺品を整理していた。
彼のお兄さんが、どうせ捨てるなら、弟の友人だった君にもらってもらいたいと言ったので、ありがたく頂戴したのだ。
昼さがりの縁側で、段ボール3箱にぎっしり入ったCDを取りだし、タバコの脂で黄ばんだケースを拭きながら、ジャンル別に並べてみた。
中学一年以来の腐れ縁だ、互いに影響を受けあい、好みは似通っている。ほとんど聞いたことのあるアルバムばかりだ。
けれど中には珍しいものもある。例えば邦楽なんかに。
一枚一枚の説明はしない。が、好事家が見れば、おもしろい並びだね、とは言うだろう(しかし、80年代のCDは音質がよくないなあ)。
やはりというべきかトッド・ラングレンとフランク・ザッパが多い。たぶんコンプリートなコレクションだったのではあるまいか?(トッドとザッパの良さはリュウジに教わった)。彼の部屋には音楽以外のCD-Rもたくさんあったので、散逸したものもあるが、主だった作品は揃っている。これで、ロジャー・パウエルの『エア・ポケット』や、『ワン・ロング・イヤー』の「ホエア・ダズ・ザ・タイム・ゴー?」が聞けるのは素直に嬉しい。
が、
もう君とバカ話しながらクルマの中でこれらの音楽を聴くことは二度とないのだ。
カラーボックスに納めたら、少しは気持ちの整理もつくかと思った、が……
リュウジとの思い出を書くのは、もう少し先になるだろう。
今はまだ、書けない、書けそうにない。
鰯(Sardine)2019/10/05