岩下 啓亮
5 min readJul 23, 2020

ナノのディレンマ

なぜコメントしないのか、というエアリプを見かけた。

議論を避けているのか、という。

現実が忙しいからさ、と答えればいい。

Twitterにかまけている時間はないのだよと、突き放してみたくなる。

いや、嘘だ。

何度も言及しようと思った。

①れいわ新選組における大西つねき氏の処遇についてと、

②立憲民主と国民民主の合流についてを。

後者については簡潔に答えられる。

今現在、進行形であるからだと。

外野が余計な口を挟んでも、両党のためにならんだろうと。

そして、正直なところ、あまり関心がないのだと。

玉木雄一郎や原口一博、そして小沢一郎と森ゆう子のいる国民民主のほうに、どちらかといえばシンパシーを感じている者としては、

枝野幸男氏が率いる立憲民主に吸収されるような合流の形は面白くない。

が、一緒になるな、と願っても、一緒になるのが必定のようだから。

過剰に期待せず、黙って見守ろうと思う。

さて、前者の問題、大西つねき氏の処遇について。

これはかなり困ってしまった。

というのも。

大西氏の講演における発言をカットアップし、問題であるとした一連の・組織的な動きに、私は「れいわ新選組潰し」の企図を、強く感じていたからである。

それは、都知事選に山本太郎が立候補する前から、うすうす感じていたことだ。

だから「命の選択」発言が糾弾されたときも、大西氏の(いっけん合理的に思える)提言には大いに問題があると感じたものの、それを「言語道断の優生思想」だと断ずるのは、あまりにも短兵級ではないかと、私は感じた。

(↑リンク先の論考が、この件に関する私の感想に一番近い。参考まで)

ましてや、れいわを批判する急先鋒たちが「党としての綱領の不備」や「組織としての欠陥」をあげつらうに至っては、かりにそれが老婆心から発せられた意見だとしても、言い過ぎの感は否めなかった。

れいわ新選組の魅力は、党則に縛られない機動力と、水滸伝になぞらえたくなるような個性の強いはみ出し者の集団であるところだ。そこが脆さであるにしても。

だから私は、どちらかといえば大西氏を除籍するという「切断」には反対であったし、むしろ、大西氏の発言を擁護する意見に、じつは心情的に傾いていた。

(今回の京都の事件で、山本太郎の「危うさを察知し、修正する能力」が、図らずも実証された形となったが)

そこで、れいわ新選組の支持者で、今回の大西氏の除籍処分に失望したり、応援をやめると公言したりしているアカウントを、私は重点的にパトロールしてみた。

彼らの失意からは共通する色合いがうかがえた。もちろん立憲民主がとくに拘る緊縮財政への批判が根底にあり、反緊縮主義の核を担っていた大西氏を追い出す党への失望が大きいのだけれども、それ以上に既存野党や左派インフルエンサーに対する「怒り」が痛いほど伝わってくる。

<野党や、左派インフルエンサー(左派リベラル論客)は、いかに華麗に政権批判をするかのゲームに明け暮れている。限られたサークル内で、互いをリツイートし、パスを回しあっているが、彼らは現政権にかわる新しいビジョンを提示できていない。ただ批判するだけの存在である。>

何人かの意見を合成してみたが……

この指摘は正直こたえた。鳩尾に強烈なボディーブローを食らった気がした。自分が指弾されているのではないにせよ、私もまた《対象に含まれている》と感じてしまった。

なぜならそれは、かつての私が言い募っていたことだからだ。

Twitter内の世論を形成するために、識者や知識人はお互いの意見を交換し合う、まるでパス回しに興じているみたいだ、と数年前の私は、再三指摘していた。

政治について、現政権の間違いや矛盾をつき、140文字に要領よくまとめ、数百単位のリツイートを稼ぐ今の私は(異邦人やショコラほど巧みではないにせよ)指弾される側だ。

おそらく彼らの目に私は、“政権批判”という名のゲームに興じている有閑者のように見えているに違いない。

違うのに。

私は、自分の感じるままに、誰のためにでもなく、党利党略や何者かの差し金でもなく、そのときどきの感想を記しているだけなのに。

が、この被害者意識もまた、左派特有の感情の露呈だと思われるんだろうな。

私だって、闇雲に政権批判なんかしたくないのだ。一銭にもならないし、たいして面白くもない。できれば、音楽と猫と日常の暮らしだけを書いていたい。けれども政治は安穏を許さない。日々生活領域を侵犯してくる。その圧力に抗おうと、レトリックではなく、オノレの貧弱なボキャブラリーを捻って、絞って、繰り出しているのだ。

私のような中堅アカウントは、インフルエンサーならぬ、ナノインフルエンサーと呼ぶのだそうだ。ははは。ナノか。まあ、吹けば飛ぶような、ちっぽけな存在だ。

なんだか、政府の批判をするのが、心底ばかばかしくなってきた。

こうして国民は沈黙の澱に身を浸すのか。

もう少し、じたばたするけど。

かなり消耗している。

悪いが、きみたちの期待する威勢のいいツイートは書けそうにない。

自分と異なる立場の意見に「いいね」をつけただけで失望するような、狭量な人たちの期待には応えられそうにない、

ナノだ。

鰯 (Sardine) 2020/07/24

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Written by 岩下 啓亮

鰯です。熊本在住。イワシ(Sardine)とお呼びください。Mediumを日本語と英語の練習帖として活用しようと思う。Medium以外では、こちらを回遊しています。Twitter → @iwashi_dokuhaku はてなブログ『鰯の独白』→ kp4323w3255b5t267.hatenablog.com

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